No.241:出されたホームページ案のイメージが違う!外注業者の活用が下手な会社は、社員の活用も下手
「矢田先生、送られてきたこの案を見てくださいよ。」
F社は、いままでの工事業を脱し、サービス型事業への転換を図っています。その事業性に確信を持てたタイミングで、ホームページの作成に入りました。
「私のイメージとは全然違うのです。業者さんが解ってくれなくて。」
業者と上手くパートナーシップを組めていないようです。
矢田は、お願いしました。
「ホームページの企画書を見せてください。」
F社長、「いえ、ありません。打ち合わせの議事録は、先方が作ってくれています。」
外注業者を上手に使えない会社の典型のようです。
大手企業は、その業務の多くを外注業者に依頼します。販促物の製作はもちろんのこと、コールセンターでの受注から、商品の製造、在庫管理、発送、料金の回収、店舗開発まで、考えられるものすべての外注化に取り組みます。
その一方で、自社が持つべきものを明確にし、そのコアに注力します。その部分こそが自社の強さであり、存在意義となります。その部分にすべての資源を注入することで、高い専門性とスピードを実現します。
それに対し、年商数億の会社は、その多くを自社で行おうと考えます。さすがに販促物の製作は外注しますが、コールセンターも発送業務も、その多くを内製化させたままです。外注化するという視点が弱いために、研究もしません。少ない人数で沢山の業務を行っているのが実情です。その結果、高い専門性とスピードが犠牲になっています。そして、自分たちの特色や存在意義が曖昧になります。
大手企業は、狭い部分に、多くの人数を集中投下します。中小企業は、広い部分に少ない人数を分散投下します。
外注化と自社で抑えるべき部分に、戦略を持つ必要があります。年商10億に進むためには、外注を活用することを覚えなければなりません。
外注する業務については、大きく二種類あります。作業業務の代行を依頼する「労働型外注」と専門性が高い業務を依頼する「知的型外注」となります。ワークかスペシャリティか。
前者には、DM発送、電話の受付、在庫管理、運送、凡庸な原稿作成などがあります。肉体的な業務とも言えます。その業者は、その分野を大量に受けることで、低コストでサービスを提供しています。
それに対し、後者は、デザイン、設計、企画、システム開発、エンジニアリングなどの、知的な業務と言えます。請けるほうに、高度な専門性と創造力、そして、熱意が必要になります。そのため、ある程度高額になります。
我々は、この労働型外注と知的型外注のどちらも、駆使していくことになります。外注に依頼する際には、上手に依頼することが重要になります。お互い「他人」ですから、すり合わせが必要になります。特に、後者の、知的型外注の場合、認識を合わせることが重要になります。それが有って初めて、彼らの力を引き出すことができます。その依頼の上手い下手で、成果がまるっきり違ってきます。彼らを使う方に、力が必要になります。
労働型外注では、やってもらう作業が明確に存在します。そして、動いた分だけその成果は生産されます。それに対し、知的型外注では、定型でやってもらうことは無く、求めるものは成果になります。成果は、「お客様に喜ばれた」、「集客できた」、という結果になります。
知的型外注を活かすとは、自分の替わりに、そのスペシャリストの脳を借りることを意味します。それは、事業発展のすごい力になります。
外注を使うノウハウこそがその会社の力となります。そして、この知的型外注と労働型外注をコントロールすることこそが、自社の社員の役目となります。皆様も、そんな取引先の大手企業を見てきているはずです。
今現在、大手企業から労働型外注として使われている会社は、厳しい値引き要請を受けているはずです。そのような会社は、更なる規模拡大による効率を追求するか、それとも知的型外注へのポジション転換が必要になります。
知的型の事業を行うのであれば、そのための仕組みづくりが急務となります。多くの年商数億の企業が、その転換ができないために、停滞するのです。その典型が「職人社長」と言えます。
冒頭のF社は、いままで大手企業の工事を受けてきました。労働型外注の位置づけです。本当は、非常に専門性が高い工事業なのですが、価格は「日当(手間賃)」しかもらえていません。
そのため、「知的型事業」への転換を進めました。その確信が持てたので、ホームページの作成に入りました。狙い通りにいけば、そのホームページから、毎月数件の問い合わせが有るはずです。
そのホームページの製作を、評判の高い業者に依頼しました。実際にその業者に依頼して成果を得ている会社も知っています。
ホームページの案が出されました。それに要望を伝え、数度修正をしてもらいました。その結果が、「私のイメージとは違うのです。業者さんが解ってくれなくて。」となりました。私は、「絶対に必要ですよ」と伝えていた企画書を求めました。その答えは、「無い」でした。
知的労働者に対しては「紙」で依頼することが絶対に必要です。紙により、こちらの意図することを、伝えることができます。そして、それを言語で補足することで、その「感じ」を共有することができます。また、考えを交換することで、アドバイスを引き出すこともできます。その上で、再度、紙を修正します。
そして、この紙にまとめる作業を繰り返すことで、検討が深まります。また、考えがまとまります。この企画書の作成は、「こちら」の役割となります。この企画書こそが、自社の戦略であり、存在意義なのです。そして、外注を使うツールであり、ノウハウになります。
外注を使うのが下手な会社は、企画書をつくりません。自分の事業や意図を人任せにするのです。そのため、外注先に意図が正しく伝わりません。その結果、スペシャリストの力を引き出せないのです。そして、紙に向かわないために、自らの考えが固まっていかないのです。紙にまとめる作業が外注業者の役目だと、全く間違った考えをもっています。その結果、外注業者を使う力もそのノウハウも自社には残らないのです。そして、その企画書がないから、その後に社員に振ることもできないのです。
外注業者が解ってくれないと嘆いてはいけません。外注業者を使う力が無いだけなのです。自社のその力が高まるほど、使える外注先は広がります。他分野の外注も、よりスペシャリティな外注も使えるようになります。
外注業者を使うことが下手な会社は、同時に、社員を使うのも下手な傾向があります。この外注を使うノウハウは、社員を使うノウハウと全く同じなのです。知的労働者を使うノウハウです。専門性が高い人に、創造物の作成を依頼し成果を出してもらうという面では、外注でも社員でも、全く同じなのです。
いままでのF社の事業は、作業主体でした。そのため、社員も外注先も、作業労働者がメインなのです。この作業労働者を使い、成果を得ることは出来ていました。外注に、工事の一部を依頼してきました。それと同じように、社員にも「作業」をやらせてきました。
サービス型事業への転換により、知的労働者を使う必要性が出てきました。社員にも、外注業者にも、知的成果を求めることになりました。当然違う使い方が必要になります。彼らを、納得させ、創造性を引き出し、やる気にさせる必要があります。
いままで知的労働者を、まともに使ったことが無かったのです。社員でも、外注でも、作業労働者は使える。しかし、知的労働者を使えてはいなかったのです。
外注業者は、こちらがお金を払っているだけに、理解しようとすり寄ってくれます。それに対し、社員は、それほど粘り強く付き合ってはくれません。外注も上手に使えない会社に、知的社員を使うことなど無理なのです。
F社長は、企画書を自ら作成することに向かいました。その作成により、実は、自分自身の考えが不明確であり、ブレブレであることに気づくことになりました。
その作成した企画書で、再度、業者と打ち合わせを行いました。
F社長、言われます。「あの打ち合わせ時から、業者さんとの関係が変わりました。チームという空気になりました。」
今現在ホームページは稼働し、狙い通り月に数件の問い合わせが来ています。社長と社員と業者で定期的に集まり、解析と修正を繰り返しています。まさにチームなのです。F社長は、初めて知的労働者を使って成果を得ることができたのです。そのチームを作ったのは、F社長なのです。
労働的な対価をもらう事業を止め、サービスにより価値提供をする事業への変革を進めます。それにより、儲かる年商10億にすることが可能です。
それを支えるのは、知的労働者のやる気とそのスペシャリティを引き出すノウハウなのです。そのノウハウ、その仕組みこそが今必要なのです。
自社を、知的労働者に思う存分働いてもらい、活躍できる場として作り変えるのです。それこそが、自社の最高の資産であり、強さになります。
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