No.346次の管理者が育っていない、そんな会社がやっている致命的な間違いとは?

№346:次の管理者が育っていない、そんな会社がやっている致命的な間違いとは?

医療系N社長からの相談です。
「マネジャーの下が育ってこないのです。無理やりでもいいから、彼女を外したほうがよいでしょうか。」
 
そして、翌日、工業系K社長から相談を受けました。
「次の管理者の成り手がいません。中堅社員全員に意向を訊いても、このまま現場で良いと答えるのです。」
 
この2社は、同じ間違いを犯してきました。
それも長い時間です。
 
その結果、「次の管理者が育っていない」という今の状態が出来上がりました。
会社を、根本的に作り直す必要がありそうです。


人は、自分で自分を育てることができます。
これこそが、人間が持つ特性と言えます。動物には、これはありません。
 
自分が、英語を身に付けたいと思えば、英会話スクールに申し込みをします。または、本屋でテキストを買います。そして、その練習を行います。
 
マーケティング担当者として、成果を出したければ、それを勉強するだけです。セミナーに参加したり、他社のやり方を研究したりします。そして、企画書作成やデータ分析に時間の多くを使います。
 
筋肉と同じです。自分が狙う筋肉を意識して、トレーニングをすることで、そこをより強化することができます。また、より上手に使えるようになります。
 
このように、我々は、自分の伸ばしたい所を、選んで伸ばすことができます。
その分野に興味を持つ。その分野の知識を増やす。そして、その分野に多くの時間を使う。
 
それは、いままで使ったことがないものです。思考パターンも体の使い方も、習慣になっていません。そのため、習得には苦労が伴います。特に初期は、成果を感じられないために、忍耐が必要になります。
 
何かを身に付けるためには、その対象について、多くの時間を使うことです。
時間なしには、習得もなければ、習慣の置き換えも無いのです。
その時間と思考は、その対象に向かっています。また、体はそのための構えを続けています。
費やす時間とそこに向けた集中こそが、その人を育てていくのです。
 
しかし、時間は有限です。
やりたいこと全部を、やることはできません。
自分は何がやりたいのか、自分はどんなことで役に立ちたいのかを、考えることです。自分の人生に向き合うことになります。
 
その一方で、捨てることを選びます。
自分が選んだ少しのことのために、その他多くを捨てることになります。
 
自分の何を伸ばすかを決めるということは、何を捨てるか(伸ばすのをやめる、衰退させる)を決めることになります。


『なぜ、人が育たないか』
その答えは、明確です。そして、これしかありません。
『やらせていないからです。』
 
その社員は、一日の中で、何に多くの時間を費やしているでしょうか。
何に、意識を向けているでしょうか。
彼らの体は、何に構えをとっているのでしょうか。
 
その対象が伸びるのです。その対象だけが、伸びるのです。


その対象が、こちらの期待するものであれば、問題はありません。
その対象が、こちらの期待と異なれば、問題となります。
それでは、期待する方向に、育つことは絶対に無くなるのです。
 
医療系N社
社長の下には、A氏という非常に有能なマネジャーがいました。
彼女が、複数ある医院の管理を担っています。各医院を回り、問題があるとすぐに対処の指示を出します。医院の整理整頓の状況確認や新人スタッフにも、目を配ります。非常に優秀なのです。
 
しかし、その彼女の優秀さの下で、他の管理者が育たなくなっていました。
N社長は、A氏に何度も言い聞かせます。
「もっと任せたらどうか。君が居るから、次が育たないのだ。」
 
A氏は、口では「解りました」と言います。しかし、何かと現場が気になります。そして、何かと理由をつけて、戻っていきます。彼女は言いました。
「まだ、育っていません。もう少し時間をください。」
 
これを繰り返してきたのです。
私は、N社長に「A氏に新しいテーマを与えてください。」と提言をさせて頂きました。
 
私から言わせれば、「A氏は、暇なのです。」だから、すぐに現場に戻るのです。他の具体的なミッションを与える必要があります。意識を何か別のものに向けさせる必要があるのです。
 
N社長は、すぐにそれを実行しました。より大きな展開のための本部を立ち上げ、A氏を本部長に据えたのです。
それは、当然A氏には、未経験な分野です。本部機能の構築のために、多くの時間を使うようになります。各院に足を運ぶ回数は、極端に減ることになりました。その大きな目標の下では、各医院の状況は、小事になっていったのです。
 
すでに、各医院の運営の仕組みは出来上がっていました。そして、一つの医院をマネジメントする医院長が何をするのかも、決まっているのです。
 
それが、すぐに各医院主導で、回り始めることになります。そして、問題が起き始めます。清掃にゆるみが出てきます。スタッフが人間関係の問題を上げてきます。それに、各医院長が曝されることになったのです。それらは、すべてA氏が担ってきたことです。
 
彼らは、いままで「医者」という職人的な業務に時間と集中力を使えばよかったのです。それが、「管理」を向かわざるを得ない状況になったのです。彼らの、思考の中心を「管理」が占めるようになりました。
 
すぐに、医院長の態度が変わってきました。スタッフの作業だけでなく、態度にも言及するようになったのです。また、彼らから、本部のA氏に相談することが多くなりました。
 
 
工業系K社
「将来の幹部候補」ということで、毎年、新卒を数名取り続けています。
しかし、今のK社は管理者不足の状況に陥っています。彼らは、どこにいってしまったのでしょうか。
 
優秀な社員は、2、3年で辞めていきました。
真面目な社員は、現場で作業を続けることを望んでいます。
 
K社長は、「やらせれば、伸びるだろう」と考え、中堅社員の数名を管理者に任命しました。
「君は、明日から主任だ。」、「君には、製造部の課長を担ってもらう。」
 
しかし、結果は散々なものでした。
彼らは、管理者として、部署をまとめることをしません。また、業務の改善をすることもありません。やる素振りをしても、すべてがダメなレベルです。
そして、いままで通りに、ラインの一部に戻っていきます。工場内では、誰が管理者か解らない状態です。
 
私は、K社長にお伝えしました。
「根本原因は、やらせてこなかったことです。」
 
下記が私の指摘であり、K社のやってきたことです。
 
ずっと作業しか、させていない。
新卒を採用すると、「まずは現場を覚える必要がある」と製造ラインに入れます。
 
作業の毎日です。朝礼に参加し、現場の大ベテランの先輩に手順を教わります。その先輩の手には、黒色が染みついています。
 
最初の数年は、覚えることに一生懸命です。3年も経つと、体も慣れてきます。
優秀な同期は、そのころに辞めていきました。自分は、残ることを選びました。
 
毎日、制服は真っ黒になります。風呂の後のビールが楽しみです。「お疲れ様でした。」と職場を後にします。
 
こんな毎日を十年近く過ごしてきました。年齢は30歳を超えています。
立派な作業員が出来上がっています。
 
ある日、K社長から、訊かれました。「君は、管理者になる気があるか?」
正直、管理者が何をするか解りません。また、自分にそんな能力があるはずがありません。「いえ、すみません」と、答えるしかありません。
 
毎日、作業をやってきたのです。
作業に、自分の時間、それも、20代の多くの時間を割いてきたのです。
思考も体も、現場作業に完全に適合しています。いつの間にか、自分の手も、黒くなっています。


K社のようなことは、製造業に限ってのことではありません。
美容師、販促制作、システム開発、施工管理、営業。
これらは、全て作業です。作業こそが、顧客を満足させ儲けを生む場ではあるのです。だからこそ、計画的に作業以外のものをやらせないとダメなのです。
 
これが、管理者不在の理由です。
これが、多くの会社の人が育たない原因です。
「やらせていない」、だから、「育たない」。
 
彼らの時間を何に向けさせるのか、それを、考えることです。
社長として、考えるための時間が必要です。
何を考えるかが、すべてです。
 
会社を変えるためには、『社長』を変えるしかないのです。
 
人は、自分で自分を成長させることができます。
それは、自分で自分の会社を成長させることができるということです。

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