No.379:社員に動いてもらうのが上手い社長が、共通にやっていることとは?
「先生、すみません、全然進んでいません。」
建設業S社長は、席につくなり言いました。
任せている部長が案件に取られ、仕組みづくりが進んでいないというのです。
私は、御聞きしました。
「本当に、彼は、少しの時間も取れないほど忙しいのですか?」
S社長は、少し考え、答えます。
「いいえ、それほど忙しいわけではありません。」
でも進まないのです。案件でそれほど忙しくない、のに進まないのです。
こういう場合に確認すべきことは決まっています。
社長の関与不足です。十中八九が、「任せすぎ」なのです。
設計―依頼―実行
すべては、このプロセスで実現していきます。
何をどうやるかを決める「設計」、そして、それを誰かに動いてもらうための「依頼」、最後は、それを実際に実現すべき動く「実行」。
すべて、この3段階を踏むことが必要になります。
事業モデルや方針、そして、目標。
これを、自分一人で実行するのであれば、その多くを飛ばすことができます。
設計は自分の頭の中にあれば、良いのです。そして、依頼というまどろっこしいことは必要ありません。そして、自分が動くだけです。
その結果、自分が満足できれば良いのです。満足できる仕事で、満足できる収入があればよいのです。そして、自分も成長します。
しかし、自分一人では成し得ないことをしたいのであれば、やはり3段階を踏む必要がでてきます。
まずは、どのような事業をやりたいのか、どう伸ばしていきたいのかを、文章にまとめます。この設計の後に、依頼に移ります。
その文章を使い、動いてもらう人達に説明をします。そこで、理解と納得をしてもらう必要があります。理解とは、頭で受け入れることを意味します。そこには、ロジックさが必要になります。納得とは、心が受け入れることを意味します。その内容に、社会的な意義も必要になります。また、その依頼のプロセスで、自己と自分の受け持つことに重要感を得ることができます。
そして、実行段階です。実行では、定着までの期間があります。何事もやり始めは、上手くできません。また、面倒という思いが浮かびます。ここを乗り越えると、無意識でできる状態、すなわち、習慣になります。
その後は、維持となります。どうしても、マンネリ化します。また、改善もあれば、状況も変化します。今と同じ鮮度や効果を維持するために、策を施すことが必要です。定期的なチェック、勉強会などを仕込んでいきます。
設計―依頼―実行、この3段階を踏む必要があります。
会社においては、この中心が、「経営計画書」になります。経営計画書が、設計書になり、依頼書になります。依頼を、方針発表会や会議で行います。そして、行動計画書でまた具体的な行動を依頼し、その進捗をチェックするのです。月例会議とは、その設計、依頼、行動の確認の場だと言えます。
部下と上司は、日々、これを繰り返していきます。
この設計―依頼―実行により、自分以外の者に動いてもらうことが可能になります。
この3段階というプロセスを構築する力が、社長には必要になります。
そうでなければ、多くの人を動かすことはできません。そして、事業を大きくすることもできず、会社は小さいままになります。
このプロセスを構築できないということは、「その多くを自分で抱える状態に陥る」ことを意味します。それは次のような状態です。
・営業や企画という仕事を、自分しかできない。他の社員は、アシスタント的な業務をやっている。
・自分だけが多くの案件を抱え、残業、休日稼働している。他の社員は、余裕綽々で定時に帰っていく。
・目標達成や仕組みの改善について考えているのは、社長だけ。管理者も、その日その日、体を動かしているだけ。
これら全ては、社長自身にプロセスを構築する力がないことに起因しているのです。
冒頭の建設業S社長も、それを苦手とする社長でした。
事業モデルと営業の仕組みが出来あがり、順調に売上げが伸び始めました。半期で前期と同じ2億3千万円は確保し、近日中には、1億円と5千万円の工事の受注が決まる予定です。
そのため、仕組みづくりを急いでいました。
その仕組みづくりを、優秀なA君と進めることにしました。
A君は、真面目で能力も高く、受け持った案件を確実にこなしていきます。お客様の信頼も厚く、そして、しっかり利益も出してくれます。
S社長は、A君を部長に抜擢しました。
自分で、案件を受け持ちながらの取組みです。忙しくなりますが、A君は、「頑張ります」と快諾をしてくれました。
そして、案件の管理表やマニュアルの作成を依頼しました。
A君は、こちらが期待する以上の案を作ってきます。S社長も、手ごたえを感じていました。
それから、数か月が経つと、明らかにそのペースが遅くなってきます。仕組化が遅々として進まないのです。
S社長は、A君に訊きました。
「どうしてやらないのだ?」
A君は答えました。
「すみません、現場が忙しくて、そっちに手が回りません。」
それを言われると、S社長も強くはいえません。A君は、部長という役職を持ったまま、いち施工管理者に戻ってしまいました。
それを、矢田に相談しました。
私は、それを訊いて、原因を「社長の関与不足」と推測しました。このようなケースでは、十中八九これのはずです。確認してみるとその通りでした。
私は、以下のことを提言させていただきました。
・毎週1回のミーティングを行うこと。「適宜に報連相すること」と言っても、やれないものである。また、作成物などもそこで意見交換をすること。そして、次の行動を具体的にすること。
・部内に展開する時の説明会には、社長も同席すること。それにより、会社としての意向であることを知らしめる。
大きくはこの2つです。
A君は、部長と言いながらも、それだけの能力は無いのです。ましてや、部下には、自分よりも年上で社歴の長い社員もいます。彼らが、素直に従うことはありません。
そのため、社長のサポート無しには、進むはずが無かったのです。彼自身も、心が折れてしまっていたのです。その結果としての、「案件で忙しい」だったのです。
S社長は、言いました。
「部長に付けたからと言って、すぐに、能力が上がるはずもないのです。任せすぎました。これは、彼の問題ではなく、こちらの問題です。反省します。」
頭の良さと誠実さをもったS社長です。
「会社に帰ったら、彼と話をしてみます。もう1回挑戦させます。」と言った後、少し考え言い直されます。「もう1回、挑戦してみます。」
S社長同様に、世の多くの社長には、やりたいことや成し得たいことがあります。
そこには、志や野望があります。
しかし、それが出来ずにいます。
いままでの規模までは、やってこられたのです。いままでは、自分が動けばよかったのです。しかし、これからの規模に進むときに、その能力不足が露呈します。自分以外の人を動かせないのです。
プロセスを構築する力がありません。
プロセスを構築する力が無いために、社員を巻き込めずにいます。管理者も機能しない状態にあります。そして、自分で抱え込んでしまっているのです。
そして、社員を潰してしまっているのです。
A君も、このままいけば、会社を去っていたはずです。
プロセスを構築する力、
年商数億円、社員10数名、文鎮型組織、
この規模のままで良ければ、それは全く必要ありません。
いままでどおり、自分が考え、動けばよいのです。
年商10億円、社員数十名、階層組織、
そして、大きなことを成し遂げたい。
望むのであれば、それは必要になります。絶対に社長に必要になるのです。
避けては通れないものなのです。
それどころか、これを習得した時には、飛躍することが約束されています。
これは、能力です。学べば必ず習得できるものです。(学ばなければ、いつまでも習得できないのです。)
世の人を使うのが上手い社長は、例外なく、その力を持っています。
設計―依頼―実行というプロセスをやっているのです。
その力を得ることです。
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