No.405:優しすぎて部下を叱らない。部下の人気取りをする。そんな管理者を、どう変えるのか?

№405:優しすぎて部下を叱らない。部下の人気取りをする。そんな管理者を、どう変えるのか?

T社長は、二人の管理者にイライラしていました。
その一人の管理者は、素行の悪い社員を叱りません。
もう一人の管理者は、部下の仕事の遅れや出来に対し、何も言わないのです。
 
そうなると、それを社長である自分が注意することになります。
 
彼らの性格が優しすぎるのでしょうか。それとも、部下から嫌われたくないから、そうしているのでしょうか。
 
T社長は、矢田に相談をしました。
「先生、叱らない管理者ってどうなのでしょうか?」


年商数億企業の組織化が進まない理由の一つに、「管理者のモデルが社内にいない」というものがあります。
 
今の組織は、社長と横一線の文鎮型です。それを、今後、管理者を機能させ、3層、4層にしなければなりません。
 
その時に、今いる社員の中の誰かを管理者にあげることをします。しかし、彼らの中には、「管理者とは、何をする人か」というイメージが無いのです。
そのため、一般社員の中から、管理者に育っていく者はいません。社歴を積んでも、日々案件をこなす社員のままなのです。その社員を管理者に任命しても、当然、機能はしないのです。
 
そこで管理者に任命する前にすべきことが、『管理者を機能させる仕組みを作る』ということです。これは、先日のコラムで詳しく書いた通りです。
 
案件の進捗が見えるようにします。また、方針書やマニュアル、社員の役目と心得などを持って、すべてに基準を設けます。そして、管理者のルーチンワークも明確に定義します。
 
ここまで出来て初めて、管理者を任命することができます。
殆どの年商数億企業では、ここまでが出来ていないのです。出来ていない状態で、管理者に任命しています。そして、その動かない状態を観て、「部長なのだから、もっと自覚を持って・・・」と怒っています。この理不尽な怒りに、その管理者は、就任当初のやる気を失い、自分の身を守るようになります。
 
ここまでの仕組みができると、それを実際に運用していきます。また、その取組みを後押しするための施策を導入します。それによって、「管理者」というものを社内に定着させ、機能させることができます。
 
その施策の一つが、評価面談となります。
多くの会社が6月と12月ぐらいの時期に行っているアレです。この評価面談は、管理者を機能させるのに、効果を発揮します。
その管理者に自分の部下を評価させることで、「こういう基準で部下を指導するのだ」という基準と、「部下ができていないのは、自分の責任だ。」という思いを植え付けることができます。
 
また、面談もやらせます。(社長が同席するかどうかは、その管理者のレベル次第です。)
その面談の場で、管理者から部下に伝えさせるのです。「君のこういうところは良い。君のこういうところは直してほしい。」と明言させます。
これにより、更に管理者に「管理者としての意識」を持たせることができます。


私は、T社長に、ここまでのことが出来ているかをお聴きしました。
 
T社長は、伏せた顔を上げて言われました。その顔から悔しさが滲み出ています。
「先生、自分は、また人に走っていました。」
 
T社長が、仕組みづくりを始めてから、一年半が経っています。
ここまでの仕組みは、完全では無いにしろ出来上がっています。
しかし、当の本人である社長の意識が変わっていないのです。
T社長は、また「社員をどうこうしよう」と考えてしまったのです。この管理者をどうすれば良いのか。自分は、どう彼らを指導すれば、そう成ってくれるのか。そこに、考えが向かっていたのです。
 
一年半もやって、まだ自分の思考のパターンを変えられていません。また、いままでと同じ過ちを繰り返していたのです。T社長は、そんな自分を悔やんだのです。
 
私には、もう一つお伝えしなければならないことがありました。
「社長、叱ってはいけませんよ。」
T社長は、はっとした表情をします。この言葉にも、T社長は、この一年半で何度も「納得」してきたのです。
 
社員を叱ってはいけません。
社員を叱れば、お互いの信頼関係は、一発で無くなってしまいます。
 
我々がやるべきことは、「伝えること」です。それも、坦々と。
「こういうことをやってください。」、「こういう場合には、相談してください。」。
こちらの理想や期待を伝えることです。そのニュアンスは、『依頼』といったほうが、正しいかもしれません。
 
「叱る」ことは、お互いの信頼関係を失うことよりも、もっと大きな弊害があります。
それは、「社内に、叱る管理者のモデルができてしまう」ことです。
 
管理者が部下を叱っています。部下の態度を直すために、叱っています。
部下の仕事の出来を正すために、叱っているのです。
それでは、職場の信頼関係は、崩壊することになります。雰囲気は悪くなります。社員は委縮します。
 
ここまでの話を聴いて、T社長は言いました。
「実際に、最近の当社の職場の雰囲気は良くありません。そのせいか、退職も多く出ています。」
 
管理者を動かす仕組みを作る。その取組みを後押しする施策を施す。
そして、運用する。その様子を観て、修正の依頼をする。
 
ここまで出来て、初めて「素養」の話ができます。
責任感がある。思いやりがある。ロジックに考えらえる。
 
二人の管理者が、「優しすぎる」のかどうかを議論できるは、この後なのです。また、彼らが「部下の人気取りをしているかどうか」も、この後なのです。
 
『部下を指導しない管理者を、どう変えるのか?』
その議論の前に、つくるべきものをつくりましょう。
 
我々が取り組むことは、管理者を育てることではありません。
「社員が育っていく環境づくり」であり、「そこそこの能力の管理者でも、管理できる仕組みづくり」なのです。

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