No.413:採用により大きく飛躍する会社と、全く変わらず人が去っていく会社の違いとは?
台風が過ぎた後の晴天の東京に、H社長が面談に来られました。
前回当社にご相談に来られたのは、4年前です。
その時の記録には、「社員の退職率が高い」とあります。
そして、今回提出していただいた「自社の課題一覧表」にも、同じような内容の記載があります。
書類を見比べる私の様子をみて、H社長が口を開きました。
「最近、育ってきた管理者候補の若手2名が、辞めてしまいました。」
そして、少し間を置き次の言葉を絞り出します。
「この4年間、同じことを繰り返しています。」
何としても採用力を付ける必要があります。
今、多くの企業では、人が採れないことが大きな問題となっています。
「案件が有っても人がいないので、受けることができない」という状態に陥っています。
または、人が採れたとしても、求めるレベルに無いのです。
そして、そのような人を無理して採ることをしています。その結果、戦力化に時間がかかっています。そして、多少使えるようになると辞められてしまいます。そして、また、募集にお金がかかることになります。
結果、絶えず人の量も質も足らずで、コストが高くつきます。そして、その状態で残った人が仕組化に貢献する可能性は、極めて低いのです。
人が採れない会社では、このような負のスパイラルが起きています。
採用力を付けた会社では、この逆のサイクルが生まれます。
募集をかければ、数十名の応募があります。その応募者のレベルも全体的に高いのです。
そして、その中から選んで採用することができます。当然、その戦力化の期間も短くすみます。結果的に、採用と戦力化に関するコストは低くなるのです。
定着する割合も高く、その中から仕組化に貢献できる人材になる可能性も高いのです。
人が採れる会社では、まさに好循環が生まれるのです。
ぜひこの事実を、冷静に受け止めてほしいと思います。
今の自社は、前者の人が採れない会社なのか、それとも、後者の人が採れる会社なのか。
もし、前者であれば、なんとしても変える必要があります。そうでなければ、この先益々、困窮することになります。
これからは、「人が採れる会社が栄え、そして、採れない会社は滅びる。」という時代が来るのです。なんとしても、採用力を付ける必要があります。
しかし、この時、注意が必要です。
採用力とは、「求人媒体の選定やその広告の作りではない」ということです。
あくまでも、企業の持つ、事業、仕組み、組織という総合力という基盤のうえに存在しうるものなのです。
事業に特色があること。業務が仕組みで回っている。そして、社員や各部門が仕組みづくりに参画している。その結果としての魅力ある会社であり、その結果としての採用力なのです。
この状態にあるからこそ、採用した社員を短期で戦力化することができます。また、優秀な人材を自社に留めることができるのです。
見た目だけを整え、社員を採用できたとしても、その多くは、入社1、2年で、見切りをつけて、去っていきます。特に優秀な人ほど、その傾向は強くなります。残った人は、「自分が他社に行っても・・・(自信がない)」と思っている人ばかりになります。
事業・仕組み・組織が出来上がり、そのうえに採用力が備わることで、一気に会社は変わることになります。
会社に入ってくる人は、いままでとは明らかにレベルの違う人ばかりです。まず、顔付きが違います。どこか品と知性を備えています。仕事を依頼すれば、「はい、承りました。」と回答をしてくれます。(大手では当たり前のことですが・・・)
そして、そんな社員達は、すぐに存在する仕組みを回し出し始めます。入ってくる社員にとっては、その仕組みは当たり前のものなのです。すんなり覚え、その通りにやってくれます。
そして、その仕組みについて、自分なりの改善案を出すようになります。
その後も売上げの伸びと共に、人の採用を続けていきます。
その結果、一年もすれば、社内には、「仕組づくりは自分の仕事と考える社員」がある率を占めるようになります。
その一方で、「言われたことをこなすのが自分の仕事と考える社員」の割合が下がってきます。その状態を居心地が悪いと感じる社員が、徐々に会社を去っていくことになります。
この時に、大きく混乱することはありません。その社員は、昔からのトップ営業マンかもしれません。また、昔からの幹部かもしれません。それでも、大きな混乱は無いのです。すでに、仕組みは回り始めており、それだけ属人性の排除が進んでいるのです。それどころか、彼らの退職により、社内から「最後の属人性」が無くなることになります。
この時に多くの社長は、言われます。
「昔の当社なら、パニックになっていたはずです。」
自分のやってきたことに、確信を持つ瞬間です。
このタイミングの人の入れ替わりにより、社内の仕組化は急激に進むことになります。
会社の変化成長は、益々早くなります。そして、その変革が本物になるのです。
私が、「2年という短期間で会社を完全に変えることができる」という理由はここにあるのです。
この時に、間違っても、全員を引きあげることに固執してはいけません。
どうしても会社の変化についてこられない社員が現れます。それも少なからずです。
それでも、坦々とやるべきことをやっていくのです。
やる気も能力もある社員と、仕組みづくりを進めるのです。
気付いた時には、全員が入れ替わっている会社も少なくありません。
会社が飛躍するとき、人の入れ替わりは、避けては通れない道なのです。
それどころか、それを半意図的に行っていくのです。
年商数億円から年商10億円に向かう途中で、人の入れ替わりが起きます。
では、冒頭のH社で起きている退職の現象は、この「入れ替わり」に当てはまるのでしょうか。
答えはNOです。
H社長もそれに気づいていました。
「仕組化も出来ていません。先生の言われる経営計画も回っていません。この4年間、本当に大事なことには、手を付けずにきました。」
H社は、強い事業を見つけることができました。これは4年前に来られた時にすでにありました。そして、採用のためにホームページを整備しました。それで、ある程度人が採れるようになりました。
しかし、内部の仕組みも、機能的な組織も、出来ていませんでした。
その結果として、「社員が育ったころに退職」という現象が続いていたのです。
そして、その繰り返しで、H社長は疲弊し、社内の活気は完全に失われていたのです。
4年前は年商3億円、今は3億6千万円です。
この事業モデルであれば、もっとスピードある売上げの伸びを実現できたはずです。
これが、作るべきものをつくらず、売上を追った時の現象です。
残念なことに、これは当社のクライアントにでさえ言えることです。コンサルティングを受け「勉強になった」と感想を言うものの、作りやすいものだけつくり、本当につくるべきものを作っていないのです。
その結果、会社は成長をしないのです。
そのクライアントは、私のところに来て、「先生、社員が辞めました・・・」、「組織の再編成が必要で・・・」と相談をします。
私は繰り返しお伝えすることになります。
「対処に追われていてはいけません。つくるべきものを作れば、会社は伸び始めます。そして、その裏で、それらの問題は無くなります。」
「社員が辞める」という現象には、「何かしらの問題がある」ということです。
だから、繰り返し「社員が辞める」という問題が起きるのです。会社としての体質、すなわち、仕組み(再現性を担うもの)が悪いのです。
体質が変わっていないのです。変わっていないのに、違う結果を求めることは、クレージーなのです。
対処に追われているといつまでも大きくなれません。何度も同じ問題に見舞われることになります。
本当に重要なもの、本当に必要なものに取り組んでください。そうすれば、必ず、人が採れ、人が活躍する会社にすることができます。
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