No.525:年商10億円の壁 その原因とその突破に必要なこと

№525:年商10億円の壁 その原因とその突破に必要なこと

「年商10億円の壁」という言葉があります。
 
企業の成長がある規模で停滞するという現象を表している言葉です。多くの企業でその現象が起きることから、この言葉が出来たのでしょう。
 
そして、売上が増えては減ったり、社員も増えては減ったり、を繰り返すことになります。世の少なくない会社がその規模で数年、それどころか生涯を過ごすことになります。
 
今回のコラムでは、改めてこの「年商10億円の壁」という現象について、そこで起きる問題とその原因を確認します。
 
それは同時に、『年商10億円に進むための条件』を示すことになります。年商数億円の会社が、年商10億円に進むために必要なものを確認しておきましょう。

(目次)

・年商10億円とは、粗利高3億円、社員20名。それを気持ちよく超える
・年商10億円のためには、事業、仕組み、組織が必要
・その1.年商10億円になる事業モデル
・その2.年商10億円をさばく仕組み(分業の仕組み)
・その3.年商10億円、年商20億円に向けての成長を担う組織
・年商数億の経営の延長に年商10億円はない

年商10億円とは、粗利高3億円、社員20名。それを気持ちよく超える


私は「年商10億円事業構築コンサルタント」を名乗っていますが、本当に重要なのは「年商」ではありません。これは皆様も重々承知のことでしょう。やはりそこで重要になるのは『粗利高』になります。「年粗利高」といいましょうか。
 
それぞれの事業モデルにより、粗利率は異なります。物を仕入れて売るビジネスであれば、粗利率は10%になりますし、コンサルタントやシステム開発で仕入れや外注の無いビジネスであれば粗利率は100%になります。
 
我々が目指す年商10億円とは、粗利高にすると『3億円』になります。「一年の粗利高3億円を社員20名で気持ちよく超えられるか」です。粗利高3億円となるとやはりそれなりの規模になります。この3億円を社員20名で稼ぐと考えると、一人当たりの粗利高は1500万円になります。すなわち生産性1500万円です。そして、社員が20名もいれば、そこでは分業が行われており、各部署が機能している必要があります。これが、我々がまずは目指すステージになります。
 
この規模でこの状態までにできるかどうかです。これが中々難しく、少なくない会社がこの『壁』にぶち当たることになります。実際に統計データを見ると、それを超えられるのは100社のうち3社となります。やはり『壁』なのです。
 
ちなみに、よく訊かれることに「複数の事業で年商10億円(粗利高3億円)でもいいか?」というものがあります。この答えはノーです。「複数の事業」と「一つの事業」での売上では、全く意味が違います。また掛けられる広告費、効率性、分業の効果など、その規模が持つ力が違うのです。あくまでも一つの事業で年商10億円(粗利高3億円)です。
 
 

年商10億円のためには、事業、仕組み、組織が必要


では、なぜ多くの会社が年商10億円には行けず、年商数億円で止まることになっているのでしょうか。それを確認する前に、年商10億円(粗利高3億円)の条件を確認しておきましょう。それにより「なぜ止まるか、なぜいけないのか」その原因が明確に解ることになります。
 
年商10億円(粗利高3億円)にするためには、大きく次の三つが必要になります。それは『事業』、『仕組み』、『組織』です。この3つが揃った時、驚くほどのスピードでその規模に進むことになります。その時には壁など感じることはありません。スムーズに進むことになるのです。
 
 

その1.年商10億円になる事業モデル


その事業モデルは、ある顧客に十分に必要とされています。そして、競合他社に勝っています。その結果、お客様に選んで頂いています。これは、すべてのビジネスの繁栄の基盤になります。
 
そこに次の二つの条件が載ってきます。一つは「クリエイティヴが無いこと」です。営業やサービスの提供の場に企画や提案、相手に合わせた対応やカスタマイズが必要となると、クリエイティヴが非常に高くなります。そうなると「並みの社員」ではその業務をできなくなります。クリエイティヴが低い、でも、十分お客様に選ばれ満足してもらえる、そんな事業にしておく必要があります。
 
そして、もう一つが「その手間と単価が見合っていること」が必要です。掛けた手間の割に儲けが少ないという状態では、長く続けることができなくなります。優秀な社員を雇ったり、広告を掛けたりすることもできなくなります。また、研究開発や設備投資もできないのです。そして、社員が増えてくると固定費も大きくなってきます。その時には全く利益が出ないことになります。
 
クリエイティヴがある、イコール、大きくならないビジネスなのです。
 
そして、手間と単価が見合っていない、イコール、大きくしてはいけないビジネスなのです。
 
年商10億円になる事業モデル、年商10億円にしてよい事業モデルへの変革が必要になります。
 

事業モデルに課題があると起きる現象

 
 

その2.年商10億円をさばく仕組み(分業の仕組み)


仕組みとは、「再現性」と「効率性」を担うものです。仕組みの再現性があるからこそ、社員にその業務をやらせることが出来ます。また売上増加に伴い社員を増やすことができます。
 
仕組み、すなわち、再現性がなければ、社員に仕事を任せることができません。また、交代で休むこともできません。その人が辞めると、そのノウハウや過去の経緯はすべて失われることになります。
 
そして、そこには効率性もありません。人に仕事がついており、それぞれが個人商店のような動きをしています。そして、部門間のやり取りで、伝え忘れや漏れなどが頻発します。また、その業務の基準は、個々に違うものがあり、それは其々の社員の頭の中にあります。
 
そこでは、仕組みという発想が弱く、何か問題が起きるとすぐに「人」に向かうことをしています。その結果、コミュニケーションや社員教育などの施策がされることもあります。それらは、一時は効果を発揮するものの、根本的には何も変わっていないために、すぐに元の無気力・無関心の空気に戻ることになります。
 
これらの状態は「人」の問題ではありません。あくまでも「仕組み」にあります。その結果、社員の退職率も高い傾向になります。採用し2、3年経ち、そこそこ業務ができるようになると退職していきます。その結果、会社は古株数名と入社数年の社員多数という歪な構成になります。
 
この状態でも売上を増やそうとします。しかし、仕組みありません。そのため、少し案件が増えると、すぐに混乱をすることになります。ミスや漏れが起き、時にクレームや取引停止までに発展します。そして、その混乱が収まると「同じ規模」で落ち着くことになります。その結果、毎年同じような年商となります。
 

仕組みに課題があると起きる現象

 
 

その3.年商10億円、年商20億円に向けての成長を担う組織


会社が成長を続けるためには、「目標に向けて進むサイクル(PDCA)」と「仕組みの改善」が必要になります。これを私は「未来づくり」と言っています。お客様に支持されて、競合に勝っていくためには、未来に向けて会社を変化成長させていく必要があります。
 
その「未来づくり」を担うのが『組織』です。仕組みと組織は似たような使われ方をしますが、全く異なるものです。「仕組み」とはこの瞬間に最適化されたものであり、その仕組みを作り変えていくのが『組織』になります。この組織が無ければ、当然、仕組みはすぐに状況に合わなくなり、多くの問題を起こすことになります。
 
期初に立てた目標を達成するために、計画的に進めることをします。主に管理者が、会社の目標をより細かい目標に分解し、方針と計画を立て、構成員に行動レベルの指示を出します。その進捗状況を定期的に確認し、必要であれば再度指示を出します。その時々において仕組みの改善を行います。サービスの追加や取引先との決め事、そして、方針変更や問題発生時など、スピーディに仕組みを直していきます。
 
「目標に向けて進むサイクル(PDCA)」を持たない会社は、その成長はやはり遅いものになります。期首配った経営計画書はすぐに机の引き出しに仕舞われることになります。そして、日々の取組みはDO―DO―DOとやりっぱなしで見直しなどもありません。その状態ですから、会社全体に一体感も生まれません。期初に立てた経営計画や目標の未達が常習化しています。
 
そして、仕組みの改善の機能がない会社は更に悪いことになります。問題が起きると社員はそれを上に報告するだけです。そこに社長が駆け付け対応することになります。そんな日々のため、それらは対策でなく、対処になっています。
 
そこでは管理者が機能していません。役職に就けたはずの社員は、他の社員と同じように日々作業をしています。そこから上がってくるのは「問題」だけで、何かの「提案」はありません。
 
お客様からは「サービスに発展性がない」と飽きられ、「また同じミスをする」と呆れられることになります。そして、その成長の無い会社に見切りをつけ優秀な社員から辞めていくことになります。そして、気づくと「いまいち」な社員しか残っていない状態になります。
 
未来を作り変える機能である『組織』が無いと、時代の変化に追いつけないのです。ましてやスピードある成長や展開は絶対に無理なのです。その結果、社長一人だけが「未来」について考え動いている状態になります。当然、会社は停滞することになるのです。そして更に時間が経つと、いよいよ会社は危険状態に陥ります。
 

組織に課題があると起きる現象

 
 

年商数億の経営の延長に年商10億円はない


「年商10億円の壁」とは、事業、仕組み、組織、この三つのうち、どれかに問題があることで起きる現象です。どれかが獲得できていない、または、三つともないか、その結果伸び切らず、年商数億円(粗利1億数千万円)で止まることになっているのです。
 
年商数億円での停滞を抜け、年商10億円に進むためには、この三つを獲得する必要があります。この規模の会社にとって、この獲得こそが最優先事項になります。月次決算や人事制度、社員教育など、それらはその後の施策になります。順番を間違えないでください。どこに自社の本当の問題があるかを正しく見極めることです。そして、その獲得に全力を掛けることです。それにより「年商10億の壁」を抜けることができます。
 
私は、年商数億の経営の延長に年商10億円はない、とお伝えさせて頂いております。創業から年商数億円のステージまでは、社長が一人で頑張ることで来ることができました。金もない、人もいない、その状況ではそのやり方しかなかったし、それで正しかったのです。
 
この先に進むのであれば、経営のやり方を変える必要があります。管理者や社員を使う、活躍させる経営のやり方にです。その一方で、社長は経営に専念するのです。それにより、スピードある成長発展、そして、年商10億円を超えて、その先へも進んでいくことができます。
 
新しいステージに進むためには、新しい経営のやり方を獲得する必要があります。「年商10億円の壁」とは、実は、今の社長の経営スタイルの限界を表した言葉なのです。また「経営のやり方を変える時期ですよ~」という社長へのメッセージなのです。
 
年商10億円という規模にあった経営の獲得なのです。
 
 

まとめ:年商10億円の壁 その原因とその突破に必要なこと



・年商10億円の壁を超えるためには、事業・仕組み・組織が必要。
・年商数億円で成長が止まる会社は、このどれかに問題がある。
・創業から年商数億円まで続けてきた経営のやり方を、変える必要がある。年商10億円というステージに合った経営のやり方を社長が獲得する。
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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