No.557:強い会社にあって、弱い会社にないもの──それは“考え方”

№557:強い会社にあって、弱い会社にないもの──それは“考え方”

時計を見ると、予定の時間より5分が過ぎています。
今日の面談は、業務系コンサル業を営むF社長です。窓から下の歩道見ると、スマホを操作している姿が見えます。
 
F社長は席に着くなり、少し疲れた表情で話されました。
「先生、一日に何通も社員とやり取りしているのです。チャットなど便利なツールができた分、彼らは解らないことがあると、すぐに聞いてきます。」
 
私は、事前に頂いた課題一覧表に目を移しました。
そこには、「社員が育つのが遅い」「組織が機能していない」とあります。

「考え方」と「手段」


この世のすべては「考え方」と「手段」でできています。
組織もまた同じです。
 
考え方とは、物事を判断する基準、目的や方針、意図のことです。「なぜそれをやるのか」「どうあるべきか」。
 
手段とは、実際の行動や仕組みのことです。マニュアル、会議、パソコン、社員の動きなど、形として現れます。
 
手段は目で見ることができます。それは誰が見ても同じものです。一方で、考え方は目には見えません。人の頭の中にあるだけです。

弱い会社で起きる現象


この考え方が共有されている会社は強いのです。社員は日々の業務で迷うことなく、適切に判断できます。さらに、自ら改善を考え、提案することができます。その多くに対して、社員は理解と納得を持つことができます。だからこそ、そこに「会社への信頼」や「働く喜び」が生まれるのです。
 
逆に考え方が共有されていない会社は非常に「弱く」なります。現場の社員は、「経験」や「勘」に頼ることになります。その結果、優秀な社員だけが活躍でき、他の社員の多くは指示待ちになります。
 
また、新人が育つのも遅くなります。「なぜこの手順なのか」が教えられないのです。単に「体を動かすだけ」になります。それを先輩社員に訊けば「昔からそうやっている」という答えが返ってきます。
 
その後も「その手順の理由が分からない」「会社の方針に納得できない(知りようがない)」状態が続きます。社員は迷いながら働き、仕事にやりがいを見い出せなくなります。その結果、退職率は高くなっていきます。
 
せっかく採用した人材が根付かず、会社は永続的に人手不足に悩まされることになります。

会社に考え方を仕込む方法


社長は、社員と「考え方」を共有しなければなりません。それは「目では見えない」だけ、意識的に取り組まなければなりません。
また、会社の至る所に「考え方」を仕込むことが必要になります。手段だけではなく、そこにある意図や目的を一緒に伝える仕組みにするのです。
 
・マニュアルには、手順だけでなく「なぜこの順序なのか」「前後の工程とのつながり」を記す。
・会議では、単なる数字の報告や行動の指示にとどめず、どう判断するかという方針を示す。
・業務基準書には、会社の考え方やルールを明文化して残す。
 
これらの積み重ねが最終的に 事業理念へと繋がることになります。自分の日々の業務が、会社のミッションや社会的な意義に繋がるのです。

昔の社長の口頭指示が判断基準


考え方が共有されていないと、現場はどう判断するのでしょうか。
 
結局は、
・個々の経験
・昔、社長が口頭で言ったこと
に頼るしかなくなります。
 
これでは場当たり的で、社員ごとに判断がバラつきます。それ以上に会社には何も積みあがっていかないのです。

まとめ:社長は経営の考え方を変える


会社は「考え方」と「手段」でできています。しかし、多くの社長は目に見える手段ばかりを整え、目に見えない考え方を共有することを忘れてしまいます。
 
社員にとって一番の拠り所となるのは「考え方」なのです。それがあるからこそ彼らは活躍できるのです。
 
社長の役割は、わが社の『考え方』を定めることです。そして、仕組みを整備し全員に教え込むことです。
 
社長は「経営の考え方」を変える必要があるということです。
それにより、会社をより強くすることができます。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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