No.575:改革で人が入れ替わる:人が辞めて初めて、会社は前に進める

№575:改革で人が入れ替わる:人が辞めて初めて、会社は前に進める

「先生の改革って……人が辞めますよね。」
そう言われたのは、不動産業を営むM社の社長でした。半ば冗談のようで、しかし本音が滲んだ言い方です。
 
実際、私が関わって半年ほどで、数名の社員が会社を去っています。
M社長は少し複雑な表情をされていました。
 
多くの社長にとって、「改革=人が辞める」
これは、どうしても引っかかる現象のようです。

人が辞める改革は、失敗である!?


まず、はっきりさせておきたいことがあります。
人が辞めること自体に、良いも悪いもありません。
 
問題は、
・なぜ辞めたのか
・何が起きた結果なのか
です。
 
ところが多くの社長は、「人が辞めた=悪いことが起きた」と、短絡的に結論づけてしまいます。これでは、改革の本質を見誤ることになります。

仕組化とは「選別」である


仕組化とは、「誰でも活躍できるようにすること」ではありません。
 
仕組化には、このような意味があります。
『合う人を残し、合わない人を浮き彫りにする』
その構造をつくることになります。
 
これまで属人性で回っていた会社では、
・空気
・曖昧な期待
・個人の判断
で仕事が成立していました。
 
そこに、
・基準
・ルール
・役割
・判断軸
を入れます。すると、必ずズレが生じるのです。
 
すると、当然ですが、このズレを「受け入れ自分を変えられる人」と、「変えられない人」に分かれます。

人が辞める「二つのケース」


ここで、人が辞めるケースを整理しておきましょう。
 
① 悪い辞め方
・方針が曖昧
・ルールがコロコロ変わる
・感情で評価される
・社長の気分で決まる
 
この状態で人が辞めるのは、単なる経営不全です。
 
② 良い辞め方
・役割が明確
・基準がはっきりしている
・期待値が言語化されている
・判断が仕組みで行われる
 
この中で「自分は合わない」と判断して去っていくのは、健全な現象です。
社長自身の「これをやりたい」を曖昧にしてきただけなのです。
 
この時のM社は、明らかに後者でした。
M社長は、一つひとつ仕組みを整えていきました。すべての案件の状態を見えるようにし、そして、判断基準をつくっていきます。また、各役職の業務を決めていきます。
 
すると、これまで「なんとなくやれていた人」や「俺流でやっていた人」が、急に苦しくなるのです。
実際には、彼らは「やっていなかった」のです。また、「社長の考えとは違うやり方」をしていたのです。それが解っただけなのです。
 
一方で他の社員からは、「判断が楽になりました」、「次に何をすべきかが分かります」という声も、同時に出てきました。そして、その社員同士が協力するようになったのです。社内のコミュニケーションは一気によくなりました。
 
その結果、数名が辞めたのです。
 
M社は今、売上昨年対比130%で推移しています。人の補充は間に合っていません。
しかし、思ったほどの混乱もなく、顧客への対応も明らかに良くなっています。

提言:人が辞めない改革を目指すな


人が辞めない改革を目指してはいけません。
 
それは、
・誰にも踏み込まず
・何も決めず
・何も変えない
という宣言に等しいのです。
 
仕組みは、人を選びます。
だからこそ、会社は前に進めるのです。

まとめ:人が辞めて、前に進める会社へ


人が辞める改革には、良い悪いがあります。
そして、良い改革ほど、人は分かれます。
 
私は、最後にM社長にこう伝えました。
「人が辞めたのではありません。会社が、次の段階に進んだだけです。」
 
会社は、生き物です。成長の節目では、必ず新陳代謝が起きます。
 
人が辞めて、前に進める。
それは、健全な会社の姿なのです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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