No.606:属人化が止まらない会社に絶対的に足りないものとは!?
「先生、属人化が止まりません。」
先日、住宅系サービスを展開するS社長が相談に来られました。
S社長がコンサルティングを受け始めて、約2年。
ビジネスモデルも固まり、業績は毎年130%ほどのペースで伸びています。
ところが、S社長には一つ、大きな悩みがありました。
会社が成長しているのに、なかなか自分が現場から離れられないのです。
「社員も増えました。管理者もいます。でも、結局、私のところに判断が上がってきます。」
私はS社長に言いました。
「それは、文章が足りないからですよ。」
人が答えになるから、属人化する
属人化をなくす方法はいくつもあります。
その根本にあるのが「文章化」です。
なぜなら、文章がない会社では、人が答えになるからです。
たとえば、部下が仕事で判断に迷ったとします。
会社としての判断基準が文章になっていなければ、どうなるでしょうか。
当然、上司に聞きます。
「課長、これはどうしたらいいですか?」
つまり、その部下にとっては「上司が答え」になります。
では、その上司が判断できない場合はどうするか。
今度は社長に聞きます。
「社長、これはどうしましょう?」
その上司にとっては、「社長が答え」になります。
社長が現場を離れられない、これが根本の原因です。
文章がなければ、会社は展開できない
さらに問題があります。
その上司が退職したらどうするのか。または、新しく営業所を出す。
その時、新しく入った社員は、誰に聞けばいいのか。
文章がなければ、結局「分かっている人」を一緒に渡すしかなくなります。
こうして、展開も難しくなります。
その結果の属人化なのです。
逆に、会社としての考え方、判断基準、仕事の進め方が文章になっていれば、
「まず、これを読んで判断してください」と言えるようになります。
もちろん、すべてを文章だけで判断できるわけではありません。
しかし、文章が増えれば増えるほど、「人に聞かなければ分からないこと」は減っていきます。
ここが重要です。
会社が数億円までは伸びた。そこから営業マンを増やす。管理者を増やす。拠点を増やす。そして10億へ向かう。
このとき必要なのは、優秀な人を増やすことではありません。
まずは、今いる人の頭の中にあるものを、他の人に渡せる状態にすることです。
そのための文章なのです。
人の知識を、会社の知識に変える
考えてみれば、人類も同じです。
人類がここまで発展できた大きな理由の一つは、知識や経験を文章として残し、次の人、次の世代へ渡せるようになったことです。
我々は、その恩恵を、本やネットで今も受けています。
会社も同じなのです。
社長の頭の中。管理者やベテラン社員の頭の中。そこにある知識や判断基準を文章にしなければ、会社の知識にはなりません。その人だけの知識のままになります。
人を育てる前に、文章を増やす
だから私は皆さんにお伝えしているのです。
「属人化をなくしたければ、人を育てる前に文章を増やしてください。」
マニュアルを作ることが目的ではありません。
文章化とは、会社から「人が答え」という状態をなくしていくことです。
そして、「会社が答え」になる状態をつくることです。
社長が現場を離れられない会社には、理由があります。
人が足りないからでも、管理者が育っていないからでもありません。
「会社の答え」がなく、「人が答え」になっているのです。
そうして、人の問題が絶えない会社ができる
ちなみに、文章化ができていない会社では、人間関係も悪くなります。
なぜなら、「会社の答え」がないからです。
部下は上司から、「これは、こうやってください」と言われます。
ところが、別の上司に聞くと、「いや、それは違う。こうするんだ。」と言われます。
そして、その本人は、「いや、違うのでは?」と思っています。
誰が正しいのか。
それは「社長」に訊くしかありません(笑)
会社としての判断基準が文章になっていなければ、分からないのです。
すると、「判断の違い」が、「あの人の言うことは信用できない」「あの上司とは合わない」という「人間関係の問題」に変わっていきます。
こうして「人の問題が絶えない会社」が出来上がります。
本当は、人間関係が悪いのではありません。
会社としての答えがないことが、人間関係を悪くしているのです。
文章があれば、「私はこう思う」「課長はこう言っている」ではなく、「会社では、こう決めている」という会話ができます。そして、更に「この文章を見直そう」となります。
そこに建設的な話し合いが成り立つのです。
文章化は、属人化をなくすだけではありません。
彼らの力を解放し、彼らのチームワークを良くする効果があります。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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