No.409:人が育たない会社、優秀な中堅社員が辞めていく会社、そこに共通することとは?

№409:人が育たない会社、優秀な中堅社員が辞めていく会社、そこに共通することとは?

初めてお会いした時、H社長は、自社の一番の課題に「施工管理者の確保」をあげていました。建設業においては、「施工管理者の数が、そのまま売上げ」という式が成り立ちます。
 
私は、その時にH社長にはっきりお伝えしました。
「間違っても、人に向かわないようにしてくださいね。」
 
あれから3年が経っています。H社長から再度の面談の申込みがありました。
「先生、我社は人が育つどころか、人が去っていく会社になってしまいました。」
 
今期採用した3名の社員のうち、すでに2名が辞めていきました。
そして来月には、稼ぎ頭である中堅社員1名の退職が決まっています。
 
H社長はこの3年間、「社員を採用しては辞めて」を繰り返してきたのです。

「考える状態にある」から人が育つ


人は、「頭を使うと育つ生き物」です。「これをどうしようか」、「どうやったらうまく行くだろうか」。この頭を使っている時に、育っていきます。考えることに真剣であるほど、そして、この期間が長いほど人は育つのです。
 
会社において「人を育てる」とは、この「頭を使っている状態に社員を置くこと」を意味します。各階層の社員が其々の受け持ちのなかで、必死に考え続ける状態にするのです。
 
会社での人材育成を語る時は、組織は大きくは次の四階層で考えます。
「基礎」、「プロ」、「リーダー」、「管理者」。
 
基礎:基礎とはその字のごとく、基礎を固める段階です。「決まったことがその通りにできるようになる」訓練の段階と言えます。
 
そして、
プロ:その分野のプロフェッショナルとして、仕事を自分だけでこなすことができます。自分の給与以上を稼ぎ、会社の利益を生み出す存在です。
 
その上が、
リーダー:その「基礎」や「プロ」の社員を、数名束ねます。業務の進捗を確認し、適宜指示を与えます。必要に応じ、仕組化の提案を上長にします。
 
そして、管理者です。
管理者:課や部という単位を管理します。「今期の目標達成」と「仕組みの改善」を担います。社長と共に、会社の未来を作り変えていきます。
 
各階層が、この役目をこなすために考えています。プロ層は、よりよいサービスを提供するために勉強をしています。リーダー層は、新人に仕事を教えるためにマニュアルを作っています。この考える状態を言い換えると「未経験のことをやっている状態」となります。「未経験のことをやる」から「考えるという動作」が引き起こされるのです。その結果、人が育つのです。

人を育てることが出来る会社にあるもの


この状態を会社の仕組みによって作り出す必要があります。そのための前提が、「仕組みで回っていること」と「経営計画書によるPDCAが回っていること」となります。
仕組みがあるから訓練ができるのです。経営計画書でPDCAが回っているからこそ、社員に考えることをコンスタンスに与えられるのです。
 
人が育てられない会社では、これらの仕組みが無いために、各階層に「未経験の仕事」を与えられていません。そのため考える状態に無いのです。
 
プロ層の社員は、とっくの昔に自分一人で業務を回せるようになっています。そして、今日も同じように業務をこなしています。習慣としての動作で、それはさばけていきます。
管理者という名がついていたとしても、実質は、部下の面倒を見る程度です。方針や計画を立てることもなければ、何かの仕組みの改善を受け持つこともありません。
 
人が育つ会社では、全階層が考えるように仕向けています。人が育たない会社では、全階層が習慣で仕事をこなしているのです。

 新入社員が数か月で辞める理由


冒頭のH社も、人が育たない会社の典型でした。それどころか、社員が去っていく会社だったのです。
入社した社員が数か月で辞めていきます。この現象から、訓練制度が出来ていないことが予測できました。施工管理は応用性が高い業務であることを理由に、「先輩について覚えろ方式」をとっていたのです。その結果、新入社員は、「先輩社員の雑用係」になったり、「事務所で一人置き去り状態」になったりしていたのです。
 
新入社員3名のうち2名は、この状態に耐えられずに去っていきました。彼らは「何を覚えればよいのか」、そして「何に一生懸命になればよいのか」さえも解らなかったのです。
 
H社長は言いました。
「新入社員にも教育担当の彼にも、申し訳ないことをしました。」

中堅社員が辞める理由


そして、中堅社員である社員が辞めた理由の確認に移ります。新入社員と中堅社員では同じ退職でも、そこにある問題は全く違うのです。
 
意見交換をしているとH社長は、思い付いたことを口にされました。
「彼には案件ばかりをこなさせていました。先生の言われる通り彼は優秀でした。」
 
その彼は、入社して8年が経っていました。年齢は33歳。非常に向上心があり、自頭も人柄もよい「人材」でした。その彼にこの8年間「案件ばかり」をやらせてきたのです。
一つの工事が終わると、また次の工事を与えるという状態です。彼は、その毎日に「飽きて」いたのです。

優秀な人材を留める仕組み


優秀な人材の働く一番の動機は、「自分が成長できること」にあります。
その彼は、それがH社ではかなわないと見切りをつけたのでした。また、その状態に無い自分に焦りを感じていたことでしょう。
 
優秀な人材を留めるためには、「未経験の仕事」を与えるしかありませんそれは、組織においては、「仕組みの改善」であったり、「部下の管理」といったりになります。または、より難易度もその責任も大きい仕事をやらせるしかありません。
 
絶えず、彼らを「考える状態」にする必要があるのです。それは、経営計画書によるPDCAと、会社の成長によって初めて実現されるのです。それが、そのまま優秀な人を自社に留める仕組みになります。
 
H社長は、その面談の最後に言われました。
「悔やんでも仕方がありません。自社を根本的に作り変えなければなりません。」
 
人が育たない会社、優秀な中堅社員が辞めていく会社には、成長サイクルが無いのです。会社としての成長サイクルが無いから、彼らに「考える仕事」を与えられないのです。
 
御社に必要なのは、会社としての成長サイクルです。そのサイクルによって、事業も仕組みも成長していきます。そのサイクルに巻き込まれて、各階層の社員も育っていくのです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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